川崎公害病患者と家族の会―増え続けるぜん息患者と新たな救済制度へ―

杜撰!廃止する制度の検証、評価せず

杜撰!廃止する制度の検証、評価せず

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川崎市答弁で明らかに

 2月8日(水)市議会健康福祉委員会で「成人ぜん息患者医療費助成制度」「小児ぜん息患者医療費支給制度」廃止に向けての川崎市の方針が審議されました。審議の中では川崎市も、川崎市地域医療審議会も、同保健部会でも廃止する2つの制度に対する「効果」や「役割」そして制度が廃止された場合、認定患者への影響については全く検討もされていないことが明らかになりました。
 制度を廃止するという重大な判断をするのに、制度が果たしてきた効果谷役割などについて評価も検討もすることも市内で制度を廃止するということは、どういうことなのでしょうか。
 川崎市は制度廃止を中止し、2つの制度が果たしている効果と役割を評価し、制度拡充の方向を示すべきです。

制度実施で死亡者減少

 川崎市が示した資料を見ると「成人ぜん息患者医療費助成制度」「小児ぜん息患者医療費支給制度」が大きな役割を果たしていることがわかります。それはぜん息による死亡者の人数です。下の表は、川崎市が示したものですが平成19(2007)年から死亡者数が3分の1に激減しています。この年から成人ぜん息患者医療費助成制度がスタートしています。

制度は医療権を保障する

 喘息予防・ガイドラインにはぜん息治療について「理想的には無症状を完全なコントロール状態とし現在の症状や薬の副作用がなく健常人と同様の日常生活を送ること」「将来にわたり呼吸機能を維持して増悪や喘息死を回避すること」を強調しています。
 そのためには日常的に医師の管理のもとで治療を進めることが大切になります。そのためには医療費負担が軽減されることは重要なのです。

【うらページ】

市単独の高齢者事業も見直し

 福田市長は、川崎市行財政改革第3期プログラム素案(令和3(2021)年11月)で「社会経済状況の変化を踏まえた市民サービスの再構築」と称し、健康福祉局関連対象事業№1として①「高齢者外出支援乗車事業の見直し」では「フリーパス式の上限回数設定」「利用者負担の増額」②「成人ぜん息患者医療費助成制度の在り方の検討」川崎地域医療審議会答申で「小児ぜん息患者医療費助成制度」を含め廃止を、③「重度障害者医療費助成制度の見直し」では、「社会状況を踏まえた見直し内容の検討」、④「高齢者に対する市単独事業」の見直し、⑤「休日急患診療所の運営手法の見直し、移設等の検討」、⑥「歯科保健センター等診療事業のあり方」⑦「生涯現役対策事業の見直し、効率的、効果的な実施」⑧「障害者施設運営補助のあり方の検討」が掲げられています。

新規受付を停止した事業の検討

 福田市長が掲げる「行財政改革第3期プログラム」素案の内容について、健康福祉局に関連する課題をシリーズで考えていきたいと思います。
 今回は④の「高齢者に対する市単独事業の見直し」(51ページ)について内容を見てみます。市の現状認識では、令和2(2020)年度から、市民ニーズや民間サービスの状況等を踏まえ、生活支援型食事サービス事業、要介護者生活支援ヘルパー派遣事業、福祉電話相談事業、徘徊高齢者発見システム事業の新規受付を停止、紙おむつ給付事業の若年性認知症への対象拡充などを開始しています。
 今後の取り組み内容では「事業執行状況等を精査し、適切な運営に努め、外部委託事業(食事サービス、ヘルパー派遣、ねたきり高齢者等紙おむつ及び日常生活用具給付、高齢者外出サービス等)や新規受付を停止した事業の今後のあり方について検討するとしています。
 
 「川崎市行財政改革第3期プログラム素案」についてでは、冒頭に次のように書かれています。「我が国は、長く続く低成長と超高齢化社会の到来等により、国や地方を通じた財政状況の悪化と生産年齢人口の減少というかつてない困難に直面しています。本市においても、厳しい財政状況の中、保育ニーズの増加や高齢化の更なる進展に伴う扶助費の増加、公共施設の老朽化に伴う維持管理費用や更新費用の増加、将来見込まれる人口減少等に伴う市税収入の減少など、安定的な行財政運営への影響が一層厳しくなる」と指摘し「社会状況の変化等を踏まえながら、行財政改革による財源・人的資源等の必要な経営資源の着実な確保等を進め、将来にわたり持続可能な行財政基盤の構築」を掲げています。
 「高齢者に対する市単独事業の見直し」に現れているように市民に直結する福祉に係る財源を「見直し」ということばによっ減らしていくことが目的のように感じます。