川崎公害病患者と家族の会―増え続けるぜん息患者と新たな救済制度へ―

重度障害者医療費助成も見直し

社会情勢を踏まえた行財政改革というけれど?

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 福田市長は、川崎市行財政改革第3期プログラム素案(令和3(2021)年11月)で「社会経済状況の変化を踏まえた市民サービスの再構築」と称し、健康福祉局関連対象事業№1として①「高齢者外出支援乗車事業の見直し」では「フリーパス式の上限回数設定」「利用者負担の増額」②「成人ぜん息患者医療費助成制度の在り方の検討」川崎地域医療審議会答申で「小児ぜん息患者医療費助成制度」を含め廃止を、③「重度障害者医療費助成制度の見直し」では、「社会状況を踏まえた見直し内容の検討」、④「高齢者に対する市単独事業」の見直し、⑤「休日急患診療所の運営手法の見直し、移設等の検討」、⑥「歯科保健センター等診療事業のあり方」⑦「生涯現役対策事業の見直し、効率的、効果的な実施」⑧「障害者施設運営補助のあり方の検討」が掲げられています。

「対象者」と「財政負担」の増加が課題

 福田市長が掲げる「行財政改革第3期プログラム」素案の内容について、健康福祉局に関連する課題をシリーズで考えていきたいと思います。
 今回は③の「重度障害者医療費助成制度の見直し」(56ページ)について内容を見てみます。市の現状認識では「重度の障害がある人が必要な医療を安心して受けられるための制度ですが、高齢化に伴う対象者の増加や、神奈川県の補助制度の見直し等による財政負担の増加が課題」となっている。政令指定都市の動向とその他の県内市町村に対する補助率の格差是正や、国による医療費助成制度の設立等を要望」」「他都市の動向や制度の見直しによる影響額の把握など制度の在り方の検討」、「現時点で結論に達していない」と記されています。取り組みの方向性には「社会状況を踏まえた重度障害者医療費助成制度の見直し内容の検討を行います。」「重度障害者医療費助成制度の見直し時期の検討」を行う。そのために庁内に「あり方検討会」を設置する。

福田市長、ジェンダー平等に逆行するのでは?

 「重度障害者医療費助成制度の見直し」は、「対象者の増加」により「財政負担の増加が課題」と福田市長は考えています。この福田市長の姿勢は弱者切り捨ての考えがあからさまに出ているのではないでしょうか。「社会状況を踏まえた見直し」と言いますが、他の政令指定都市や県内の他市町村との補助率の格差是正を根拠にしていますが「最幸のまち かわさき」を掲げるならば、重度障害をお持ちの方々やそのご家族に対して手厚い補助が自治体として差しのべられても良いのではないでしょうか。そのことを通じて社会参加の機会を広げていくことが必要ではないでしょうか。医療を受ける機会や社会参加を狭めてしまう施策は、ジェンダー平等社会を実現しようという社会状況と逆行しているのではないでしょうか。
 福田市長が掲げる、「最幸のまち かわさき」をつくることとどう結びつくのでしょうか。

【うらページ】

福田市長!期日までに回答を

福田市長に公開質問状

 1月16日(月)。福田市長に「成人ぜん息患者医療費助成条例」、「小児ぜん息患者医療費支給条例」廃止に関する公開質問状を提出しました。(1月30日までに回答要請)福田市長が川崎市地域医療審議会に「諮問」(2022年5月6日)し、同年11月24日に審議会から市長に対し「答申」が手渡されました。
 「答申」は成人ぜん息患者医療費助成条例」と「小児ぜん息患者医療費支給条例」を廃止すべきという内容でした。患者会は答申が出される前から、福田市長に対し被害者の声を聞く場を設け、市政に反映することを求めていますが、福田市長は患者と直接会って話し会う場を拒否し続けています。公開質問状の中身を多くの方に知っていただきたいと思っています。

制度廃止は、受診機会を奪う!

 憲法25条は「すべての国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。②国はすべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」と謳っています。これに準じて地方自治体法では、自治体の役割を「住民のくらし、福祉の向上」、にあると定めています。
 福田市長が諮問した「成人ぜん息患者医療費助成条例」と「小児ぜん息患者医療費支給条例」の廃止はぜん息患者にどのような影響を与えるのでしょうか。宮前区に住む患者は「命の問題に直結する。心配だし、制度の廃止には反対」制度が廃止されれば、自分を含めて「受診を控える患者も増える」(2022年11月25日 東京新聞より)と訴えています。

二つの制度は受診機会を保障するもの

 切実な患者の声に対して川崎市地域医療審議会に臨時委員として出席した「アレルギーを考える母の会」の委員は「喘息は命にかかわることはほとんどなくなってきた」と報道されています。近年、ガイドラインに基づく治療が普及し、喘息死が減少していると言われます。「成人ぜん息患者医療費助成条例」と「小児ぜん息患者医療費支給条例」は、ぜん息患者の受診機会を保障し、医師の管理のもと健常人と同じ日常生活を送れるようになっているのです。憲法25条でいう「すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進」を図る大変重要な役割を果たしているのです。
 福田市長は、その役割を果たす制度を廃止してしまおうとしているのです。